手続き道

書類仕事、申請や手続きが苦手な人は多い。あれは学校の勉強とは別のものである。

「道」なんじゃないだろうか。手続き道。

柔道や生花と同じ、ひとつの所作の世界だと考えると意外にしっくりくる。

例えば家の前に知らない人の車が停まっていたとき、既存の学問だと、テコの原理でひっくり返す(物理)悲しさを綴る(国語)力づくで押す(体育)といった対策だが、行政に連絡するのが手続き道である。

たぶん平常時では手続き道がいちばん強い。

つまり、僕が手続きが苦手なのは、柔道をやってないのに柔道やれと言われているようなものだからである。

どこかに柔道を習うように手続きを教える道場があったらぜひ行きたい。

リニアモーターカーと居間

広さを六畳間で換算する癖がある。

リニアモーターカーの試乗に行ったときも、あまりの先頭の長さに「ここに六畳間いくつ入るんだろう」と思った。

リニアモーターカーの先頭部分は15m、幅が2.9m。6畳間は約3.8m✕2.9mなので3つ分である。


リニアモーターカーすごい

実家の居間が六畳だった。あの、一家でさんまのかば焼きを食べたり鳥人間コンテストを見たスペース3つぶんだ。それは広い。

それが時速500kmで走る。常軌を逸している。

もちろん渋谷の交差点とかでも、ここに居間があったらどれぐらいのスケール感なのだろうと思う。


こんな感じだろうか。

いちど外に六畳間を作って家と外のスケール感の違いを確かめてみたい。

その六畳間にタイヤが付いていて走ったりしたら最高だ。

リズムだけ俳句

会社の近所でこの車を見た。

 

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逆から読んでも七五調

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いま住(じゅ)の木 なかたゆ心 しよでん住(じゅ)

意味がわからないのに七五調なのがおもしろい。もちろん「住んでよし 心ゆたかな 木の住まい」なのだが、五七五は逆から読んでも五七五なのか。

つまり、俳句は逆から読んでもいいのだ。例えば…

エコのみせ 類みしにワイ やさけ寿司

謎の言葉なのにリズムが良くておもしろい。やさけ寿司ってなんだ。(もとは「閑さや岩にしみいる蝉の声」)。

逆から読んでも意味の違う俳句になるのもおもしろいかと思って考えてみた。

夜おそく 猿だけにする エコのみせ ←→ 蝉の声 留守に気だるさ クソおるよ

しかし完全に意味のない五七五のほうがグッとくる

すこげるな ねもしつらそぼ ゆみぼるし

けこけこみ ゴヴォけきゅみけこ 林です

最後、急に意味がわかる言葉が出てくるのもおもしろい。沼から急に人が出てくるようだ。

明日にはおもしろさがわからなくなってる気もする。

全員笑っている

なんどかラジオに出させてもらったことがある。

毎回楽しいのだ。

なんでこんなに気分がいいんだろう。このまえ気づいたが、ラジオはスタッフ全員笑っているのだ。

スタッフの人数が少ないというのもあるが、卓に座っている技術スタッフも放送作家もMCの冗談で笑っている。テレビやイベントなど関係者が多い現場だと、ひとりぐらい辛そうな若者がいる。

ラジオの出演が終わってビル出口まで案内されているとき、作家が「遊びみたいな感じなんですよね」と言っていた。

プロ意識とは無関係の、この遊びみたいな雰囲気だからできるものもあるよなと思った。

デイリーのことなんだけど。

ちっちゃいスピーカー

 

タクシーの中で流れているCMのことばかり考えている。

借りた車に荷物を積んでいると元のオーナーがやってきて「ちっちゃいスピーカー持っていく?」と言う。

言われた若者はまさかという表情で

「ちっちゃいスピーカー持っていっていいんですか?」

と聞き返し、もうひとりは画面横から入り込んで

「ちっちゃいスピーカー持っていっていいんですか?」

と同じセリフを言う。

え?この「ちっちゃいスピーカー」ってそんなにありがたいの?それとも何かの隠語?

これだけフィーチャされるのだから伏線であるのは間違いない。

だが、ちっちゃいスピーカーの中に違法薬物が詰まってて無実の罪で拘束されるとかそういう展開はなく、キャンプファイヤを囲んで終わるのだ。

回収されない伏線。しかもちっちゃいスピーカーのCMではない。

伏線なんて世の中にない。例えば「あれ、この駅、前に来たことがあるような」と言ってる人がいても、それはただの勘違いでタイムリープではない。

回収されない伏線だけのドラマを作りたいと思ったらまさにこのCMがそれだ。

こんなにもかき乱されるなんて。いい。

YouTubeで何度も見たし、ちっちゃいスピーカーがなにかも特定した。

https://www.yodobashi.com/product/100000001003453082/

これだ。

もしかして若者の間でちっちゃいスピーカーが外遊びには必須で、この商品がデフォルトなのだろうか。

20代の若者に聞いてみたらそんなことはないとのこと。

CMタイトルに「カーシェアだけじゃない」とあるので、車の貸し借りだけじゃなくてコミュニティであることをアピールしたいのかもしれない。Airbnbのような。

そうするとオーナーがなにかタダで貸してくれるという展開は納得だ。では、何を貸したらいいだろう。

ビール → 車のサービスでアルコールはだめだ
食材 → 知らない人から食べ物もらうのは恐い
ギター → 弾けない人もいるし
キャンプ用品 → たぶん持ってるだろうし…

そう思うとちっちゃいスピーカーは最善の解だ。ちっちゃいスピーカーだ。

オーナーが「これ便利よ~」も言うのも、若者たちが「ちっちゃいスピーカー持っていっていいんですか?!」と喜ぶ気持ちも分かる。

しかしちっちゃいスピーカーが欲しい。

経堂の沼

経堂にどんないい店も続かない場所があって、そこにできたそば屋が半年たたずに休業になった。

それまでそこにあったのは、晩杯屋の新業態の低価格ステーキ店(ベコ太郎)、東京初出店の博多のとんこつラーメン(博多一幸舎)、アメリカ人シェフのラーメン店(アイバンラーメン)というそうそうたる店。

そんな店でも持たなかった場所にできたのはふつうのそば屋。いちど食べたけど、ふつうだった。そばの香りがするとかではないそば。

この装備で数々の猛者を飲み込んできたワニの沼に挑むのか…。と思ったら半年たたずに休業の貼り紙。

「そ、そこは恐ろしいワニがいるんだぞ!」という声を無視して入っていってぷか~と靴だけが浮かんで来る。映画のタイトル前のエピソードのようだ。

地元ブログも「あの場所」って紹介するぐらいのバミューダトライアングル。

そば屋の向かいのカレー屋は南インド料理ですごくうまいので続いて欲しい。

三角コーンを傍らに

大腸検査では直腸に「ちょっとしたおできみたいなもの」があったので組織をとって検査にまわすことになった。

僕は不動産屋のカウンターで店員が電話で物件の空き状況を確認しているとき、
「これ必死で探してるアピールかな」
「ついさっき決まっちゃいましたって言ってるけど相手もグルかな」
「そもそも受話器持ち上げてるけど電話かけてなかったりして」
「この人は本当に不動産屋だろうか」
「ここ、不動産屋かな」
と考えるぐらい人を信じないので、「ちょっとしたおでき」も重大な病気と脳内で変換された。

2週間後、検査結果を聞く予約は9時だった。午後からデイリーの撮影がある。三角コーンが必要な撮影だったのだが、そうすると診察室に三角コーンを持って入ることになる。三角コーン傍らに深刻な結果を聞くのはどうなんだ。

そんな組み合わせ、とっちらかりすぎて説明がつかない。でも現実はたまにそういうことがある。

でもそんなショックを乗り越えておちゃらけたデイリーの撮影をするおれもかっこいいなとも思った。

結果は異常なし、おできもなんともなかった。おできの写真を見せてくれたが、蚊に刺された跡より小さかった。

こんな大きさなら「ちょっとしたおでき」って言ってくれよ。

おできのほか、医師は腸の写真を見せてくれた。写真は腸の奥から肛門に向かって進み、最後に肛門のところで痔がありますねと言った。痔を腸の側から見たのは新鮮だった。

いくつかの塊があっちこっち向いていて、ラシュモア山の大統領像に少し似てた。

わ、起きてた

眠りが浅い。

いびきをかいている人は少しつっつくと静かになるものだが、僕は少しつっつかれると起きてしまうのだ。

僕のいびきを止めようと突っついた妻は「わ、起きた」と思うらしい。

前回に続いて大腸検査の話だ。

腸のなかを機器が移動するので麻酔を入れる。「ねむくなる薬いれますね」と言われたのだが、まったくねむくならなかった。そういうものなのかなと思ってじっとしていた。

検査している人たちが子供の自由研究をやったかどうかという話をしているのが聞こえた。「僕、自由研究みたいな仕事しているんですけど、読書感想文を作る企画は人気ですよ」と会話に入ってみた(腸にカメラ入ったまま)。

しかし検査師の答えは

「わ、起きてた」

だった。家でよく聞くセリフだ。死体がしゃべった、みたいなリアクションが愉快だった。

しかし後から考えたのだが、「自由研究みたいな仕事」や「読書感想文を作る企画」って麻酔で朦朧としている人の発言と思われたかもしれない。でもデイリーポータルZのことである。

僕の仕事はうわ言みたいなんだなと検査後のベッドで思った(そこでも全く眠くならなかった)。

うんこにだめ出し

大腸カメラ検査を受けた。

検査のまえに腸をカラにする必要がある。そのために2時間かけて2リットルの下剤を飲み、10回以上トイレに行くように言われた。便が黄色で透明になったら検査を始めるとのこと。
そのヘビーな説明を聞いてトライアスロンのようだと思ったがぜんぜん違う。

案内された部屋には同じ検査を受ける人が5名ほど。ひとりにひとつ小さい机が用意されていて、そこに下剤が置いてある。トイレに行くことが義務付けられた小部屋である。

ほぼ同時刻に入った男性が隣りに座る。あまりトイレに行けてないようだ。でも手元のメモをちらっと見たらトイレの回数が僕より1回多かった(回数をメモすることになっている)。悔しい!
かたや「飲んでるんですけどまだ1回しかトイレに行けないんです…」と看護師に言う人もいる。その人の横を通ってトイレに行くときは腰をかがめて音を立てないようにした。僕だけすいませんという気持ちだ。

悔しさと遠慮、うんこだけど感情はいつもどおりである。

そして便がクリアに仕上がったら、看護師に見せるのだ(なんと!)。

僕は前日に消化のいい専用食(テンション上がって1日でいいのを2日食べ続けていた)を食べていたせいですぐに仕上がった。看護師を呼んでドヤ顔で見せると

「状態はいいけど回数が少ない」

とのことだった。うんこにだめ出しされた。

「回数、大事ですか?!」

うんこなのに食い下がるおれ。

むかし村上ファンドが「金儲け、悪いことですか?」と言ってたが、あの言い方に似てた。

そしてまた小部屋に戻って下剤&うんこを繰り返す。小さい机が並んでいる部屋はちょっと教室のようでもある。

授業中にあんなにトイレを我慢していたのに、トイレに行くとほめられる教室にいる日が来るとは思わなかった。うんこを我慢して青くなってたいた中学生の自分に教えてあげたい。

君が夢見た世界は30年後にやってくるぞ、と。

エアカーはチューブの中を走ってないけど、うんこ自由の未来は来る。

そしてうんこOKになって検査を受けて異常なしだった。

(検査中や検査結果を聞いたときも面白かったのでまた書く)

考えさせられるテレビ

王様のブランチを見ているといろんなことを考える。

話題のデザートにのってる小豆がコガネムシだったらどうだろうとか、物件紹介のコーナーで全員のつなぎの色が同じだったらどんな絵になるだろうかとか。

気がつくと、もっと変にする方法をずっと考えている。

そこから転じてデイリーの企画のアイデアになったりしている。
虫っぽいデザートを探すとか(例えばだけど)。

ほかの番組ではこんなひとりブレストにはならないのだけど、王様のブランチだけは、なる。

あの凡庸さやテンポがちょうどいいのだろうか。いや、平日のワイドショーだと悪いニュースを伝えるのでそっちに反応してしまうのだが、それがないぶん自由に想像できるのかもしれない。

考えさせられる、とは社会問題によくつく形容詞だが、王様のブランチもなかなか”考えさせられる”だと思う。