耳が落ちている

家に耳が落ちている。

去年の12月にシリコンの耳がついているカチューシャを作った。マスクを掛けていると耳が痛くなるから耳を追加できます、という冗談の工作だ。

だが、これをメイカーフェアに持っていったところ好評で「これは売れる」と3人に言われた。商品化を決意してその晩にアリエクスプレスで追加の耳を購入した。

商品が届くまでの半月ほどの間にすっかり作る気は失せて、届いた耳は本棚の上に放置した。

本を出したときに耳が落ちたようで、このまえ床に耳が落ちているのを発見した。

シリコンの耳はなぜか水分が染み出して、床にシミを作っていた。

床の上の耳が汗をかく。

抽象のようだが具象である。

グレイのうちわ

4月1日から新しい会社で働く。

デイリーポータルZが事業譲渡されるのでそれに伴っての退社&入社である。(イッツコム→東急メディア・コミュニケーションズ)

退社前に会社のロッカーを整理していたらうちわが出てきた。

1999年のグレイライブのビデオ(!)とDVDの販促うちわだ。このライブビデオが2000年発売なのでその頃もらったものだろう。

残業時間は空調が切れるのでうちわであおぎながら仕事をしていた(昭和か)

使っては書類立てに戻し、幾度とあった会社の引っ越しや転籍も乗り越えていまだに持っている。21年だ。HMVで通りすがりにもらったうちわを21年。


↑うら

僕の30、40代とは、言い換えればこのうちわを使っていた時間だった。

「私の会社員人生の傍らには常にこの万年筆が…」とかだと私の履歴書みたいでかっこいいのだが、なにせ販促うちわだ。

しかもグレイのファンというわけではない。ただ、これであおいでると深夜のオフィスで仕事をしている気分にはなる。顔が汗ばんで酸っぱい匂いがしていた。

新しい会社でもらった書類に定年は60歳と書いてあった。あと10年。先はこのうちわを使った時間よりも短いのか。

しんみりしてもやっぱり販促うちわなので、しんみりしきれない。

みそ汁エアホッケー

一昨年、サンフランシスコ郊外に泊まることになったとき、Airbnbでエアホッケーつきの部屋を見つけたのでそこにした。

みそ汁のお椀でエアホッケーができるな、と思ったからだ。

濡れたテーブルの上にみそ汁のお椀を置くと、ぴったりくっついてツツツーと滑るだろう(超電導のように)。

あれをエアで再現して、しかもエアホッケーとして遊べたら最高じゃん。

興奮してスーツケースにみそ汁のお椀を入れた。

だが、お椀は重すぎてエアホッケーの台から出るエアーでは浮き上がらなかった。

エアホッケーの板(パック?)はすごく軽いのだ。

お椀はまた日本に持って帰ってきて使っている。

カップスターの模様

カップスターのパッケージで気になっていることがある。

線が波模様になっていることだ。

平らなパッケージに波うった線が描いてある。

かつてカップスターの容器には波状になった紙が巻いてあった。カップヌードルのように発泡スチロールを使わず、紙だけで熱さが伝わらないようにする工夫だった、のだと思う。

そのときカップスターのパッケージに描かれた線は波をうっているように見えた。
デザイン的にはまっすぐ引きたかったのだろうが、容器の仕様上、そう見えていたのだ。


サンヨー食品のホームページに昔のパッケージの写真があった。https://www.sanyofoods.co.jp/company/history/

そしてしばらく経ってコンビニで見かけたカップスターはつるつるの容器になっていた。お、メジャーな感じになったな!

だが、そこに描かれた線は波を打っているように描かれていた。かつて、そう見えていたのを再現しているのだ。

カップスターの会社はあの波線にそんなに思い入れがあったのか。

そして、かつてカップスターが波うっていたことを知らない世代には、「なぜか線が波うってるカップラーメン」に見えてしまうのではないだろうか。


ビニールのバランのような、「かつては意味があったけど今となってはただの模様」でとてもおもしろい。

ドイツのストリートビューが模型に見える

ドイツのストリートビューを見ていて気づいたことがある。

人がプライザーっぽいのだ。

ストリートビュー

プライザー

ストリートビュー

プライザー

プライザーはドイツの鉄道模型用のフィギュアの会社である。微妙なシチュエーションが面白くて記事にしたこともある。

「ドイツのジオラマ人形がたまらない」

当たり前だけど、プライザーの体型はドイツ人だったのだ。

トラムの停留所なんてそのままジオラマである。

プライザーのサイトからダウンロードできるカタログは見てると1時間ぐらいあっというまに経つ。

このページ

やばいよ。

サイコロステーキ

新型コロナが流行って飲み会をしなくなって9ヶ月。ときどき「ああ、天狗とか行きてえな」と思う。

居酒屋の天狗だ。

チェーンの普通の居酒屋。若者向けの激安居酒屋でもないし、もちろん名門居酒屋でもない。わざわざ行くほどではないけど帰りに寄るにはちょうどいい店。

つまみも何がうまいというわけではないけど、どれもちょうどいい。あ、でもサバの一夜干しはうまい。あと肉豆腐。

その天狗がネット通販をはじめていた。サバが食べたかったのだが、天狗の一押しはサイコロステーキだった。

確かにサイコロステーキあるな…。ぐらいだったのだが、どうもようすがおかしい。天狗自身の思いが強いのだ。

………いや、そんな超人気メニューとは思わずになんとなく食べていたのだが、その程度の意識だったことを恥じるほどの熱の入れようだ。

なにしろ鉄板付きである。

天狗で550円のサイコロステーキを焼くための鉄板がついている。サイコロステーキ3つに鉄板ついて4000円だ。

> 何度も何度も試作を繰り返した天狗のみが知っている秘密を教えます。
> サイコロステーキの美味しさの秘訣は、この鉄板が大きなカギだったのです!

だったのです!の圧にひるんでしまう。営業企画部長談! どーん!

目の前でこのテンションで説明されたら絶対に買ってるだろう。

目の前でなくても買ってしまったのだが。

肉と一緒にクール宅急便でキンキンに冷えた鉄板が届いた。

焼き方のガイド付きである。自信がないので妻に焼いてもらった。

見た目も天狗だし、味も天狗で食べた味のまんまで笑った。

忘れてたけど、これだ。肉のカリカリ具合もちょっと筋っぽい感じも、靖国通り沿いの店やヒカリエ横の店で半分無意識に食べてた味だ。

わざわざ思い出す味じゃなくて、そういえばそうだったという味。

たまに地元に帰ると空き家の軒先に半分草に埋もれてるバイクがあったりして、そういえばこんな街だったなと思いだすような。

一緒に買ったサバの一夜干しもいつもの天狗味だった(サバはたまに思い出していた)。

肉豆腐は通販になかったので自分で作った。

街を裸で眺める

先日、多摩境の健康ランドに行った(この記事を書くためだ)。

その健康ランドの屋上には露天風呂があった。露天風呂の周りに囲いはついているが、小さな台に登ると囲いから顔を出して外を見ることができる。

台の下には「橋本の街を一望できます」と書いてあった。

登ってみると、たしかに遠くに街の夜景が見えた。橋本らしい。

しかし、橋本駅で降りたこともないし、街についてなにも知らない。

はじめての街の夜景を素っ裸で眺める。

「………。」

なんでおれは裸で知らない街を遠くから見ているのだろう。死んだのか。

いま僕にとって橋本は「裸で眺めたあの街」である。いつか行ってみたいが、条件反射で裸にならないように気をつけたい。

ことわざ知らず

ことわざって不思議だと思う。

会話の途中で急に「豚に真珠」と言われても、たとえ話であると分かるのだ。豚の話だとは思わない。

「え、豚ですか?真珠を?すいませんこの資料に豚は…出てこないのですが。」

と言わないだろう。でも「ことわざ知らず」がいたとしたらなんと言うだろうと考える。おもしろいから。

「盗人?猛々しい? 誰も盗んではいませんよ?犯罪…でもないですし…」
「たしかに、朱色の染料は赤く染めますが、いま染料の話はしてませんし、取引先の取扱商品にそういったものは…」

さすがに口に出すと話の腰を折るので言わない。

気のおけないメンバーのミーティングで試したくなるが、それは何らかのハラスメントになりそうだ。

トッポ

綱島はかつて温泉地として賑わっていたらしい。

だが、東海道新幹線が開通して客を熱海にとられて寂れたとWikipediaに書いてあった。

かつての東横線がどれほどのスピードだったのか分からないのだが、神田や墨田など東京の東側からだと乗り換えいれて1時間ぐらいだろうか。

熱海は新幹線で45分である。

東京が広がって行楽地が遠ざかっても鉄道が速くなっているので行くまでの時間はあまり変わってない。

逆に言えば、人は1時間ぐらい鉄道に乗ると旅気分になるのだ。

つくばエクスプレスに乗る前にトッポを買ってしまうのはそういうわけだ。旅気分。でもただの通勤電車なのでトッポを食べてる人とかいない。

さらに逆に言えば、トッポを窓際に置くだけで山手線でも井の頭線でも旅気分かもしれない。

地下鉄はどうだろう。浮かれてる自分の顔が見えるだけかな。

ライス食べ放題

ライス食べ放題に弱い。

正確には「ライス食べ放題」という言葉に弱い。

なに?!とどぎまぎする。

だって考えてほしい。

めいめいが自由に生きていた狩猟採集の時代に稲作がやってきて集団で働かなきゃいけないからリーダーが生まれ、ムラができてクニができた。南国の植物であるイネを東北や北海道で作ろうとして飢饉に見舞われたり、水田の水を巡って血で血を洗う争いが起きたりもしただろう。
江戸時代に至っては藩の強さを米の生産量(石高)で示した。

そんな米が、食べ♡放題。

家系ラーメン注文するだけでそんなパラダイムシフトが。

「ラーメンご注文の方に限り金は1キロ1円です」って書いてあるようなものである。

経堂の商店街にある「ライス食べ放題」というのぼりを見るたびにDNAがふるふるする。

いやまあ、とはいえラーメンがあるからそれほど米は食えないだろう。

そう思って自分を落ち着かせていたが、とある店では「カレーもかけ放題」と書いてあった。

どこまでも食えちゃうじゃん!

すべての価値は永遠じゃない。1000年後、商店街に「ガソリン入れ放題」ってのぼりが立ったりするんだろう。

「タピオカ入れ放題」は来年あたりにできそうですね。