街を裸で眺める

先日、多摩境の健康ランドに行った(この記事を書くためだ)。

その健康ランドの屋上には露天風呂があった。露天風呂の周りに囲いはついているが、小さな台に登ると囲いから顔を出して外を見ることができる。

台の下には「橋本の街を一望できます」と書いてあった。

登ってみると、たしかに遠くに街の夜景が見えた。橋本らしい。

しかし、橋本駅で降りたこともないし、街についてなにも知らない。

はじめての街の夜景を素っ裸で眺める。

「………。」

なんでおれは裸で知らない街を遠くから見ているのだろう。死んだのか。

いま僕にとって橋本は「裸で眺めたあの街」である。いつか行ってみたいが、条件反射で裸にならないように気をつけたい。

ことわざ知らず

ことわざって不思議だと思う。

会話の途中で急に「豚に真珠」と言われても、たとえ話であると分かるのだ。豚の話だとは思わない。

「え、豚ですか?真珠を?すいませんこの資料に豚は…出てこないのですが。」

と言わないだろう。でも「ことわざ知らず」がいたとしたらなんと言うだろうと考える。おもしろいから。

「盗人?猛々しい? 誰も盗んではいませんよ?犯罪…でもないですし…」
「たしかに、朱色の染料は赤く染めますが、いま染料の話はしてませんし、取引先の取扱商品にそういったものは…」

さすがに口に出すと話の腰を折るので言わない。

気のおけないメンバーのミーティングで試したくなるが、それは何らかのハラスメントになりそうだ。

トッポ

綱島はかつて温泉地として賑わっていたらしい。

だが、東海道新幹線が開通して客を熱海にとられて寂れたとWikipediaに書いてあった。

かつての東横線がどれほどのスピードだったのか分からないのだが、神田や墨田など東京の東側からだと乗り換えいれて1時間ぐらいだろうか。

熱海は新幹線で45分である。

東京が広がって行楽地が遠ざかっても鉄道が速くなっているので行くまでの時間はあまり変わってない。

逆に言えば、人は1時間ぐらい鉄道に乗ると旅気分になるのだ。

つくばエクスプレスに乗る前にトッポを買ってしまうのはそういうわけだ。旅気分。でもただの通勤電車なのでトッポを食べてる人とかいない。

さらに逆に言えば、トッポを窓際に置くだけで山手線でも井の頭線でも旅気分かもしれない。

地下鉄はどうだろう。浮かれてる自分の顔が見えるだけかな。

ライス食べ放題

ライス食べ放題に弱い。

正確には「ライス食べ放題」という言葉に弱い。

なに?!とどぎまぎする。

だって考えてほしい。

めいめいが自由に生きていた狩猟採集の時代に稲作がやってきて集団で働かなきゃいけないからリーダーが生まれ、ムラができてクニができた。南国の植物であるイネを東北や北海道で作ろうとして飢饉に見舞われたり、水田の水を巡って血で血を洗う争いが起きたりもしただろう。
江戸時代に至っては藩の強さを米の生産量(石高)で示した。

そんな米が、食べ♡放題。

家系ラーメン注文するだけでそんなパラダイムシフトが。

「ラーメンご注文の方に限り金は1キロ1円です」って書いてあるようなものである。

経堂の商店街にある「ライス食べ放題」というのぼりを見るたびにDNAがふるふるする。

いやまあ、とはいえラーメンがあるからそれほど米は食えないだろう。

そう思って自分を落ち着かせていたが、とある店では「カレーもかけ放題」と書いてあった。

どこまでも食えちゃうじゃん!

すべての価値は永遠じゃない。1000年後、商店街に「ガソリン入れ放題」ってのぼりが立ったりするんだろう。

「タピオカ入れ放題」は来年あたりにできそうですね。

怖い人

知人は店をやっていて、となりに怖い人が住んでいる。

だがその怖い人はふたごで、同じ顔で優しい人も一緒に住んでいる。

話してみないと怖い人か優しい人かわからない、とのこと。

(この設定だけで最高でしょう)

旅行のおみやげを隣に持っていったら喜んでくれた。優しいほうの人だった。やった!

翌日、あれ美味しかったでしょう?と話しかけたら「そんな物もらってないぞこのやろう!」と怒鳴られたそうだ。怖い人だった。

ゲームのようだ。「怖いほうの人だった。ゲームオーバー」である。

そして優しい人は怖い人にもらったお菓子をあげてないことがわかる。

もっと展開して、実はひとりでしたとか、踊る3人目とかが登場してほしい。他人事だから。

通夜の酒のうまさ

お通夜で酔っぱらったことがなんどもある。

奥に通されて遠慮しながら寿司をつまみ、とっくり型の1合瓶がやたらとうまく感じてしまうのだ。

↑こういうやつ

《いま酔ってはいけない》という意思がまた酒をうまく感じさせる。

会場ではシャンとしたが(自分としては)、会場を出た途端にでろでろになって帰りの商店街でゲームソフトを爆買したこともある。

あの安い清酒が秘密ではないか。そう思ってあの酒と安い寿司をライフで買った。

やっぱりあの空気がないと酔えない、

なんてことはなく寿司は旨く、しっかり酔えた。しかも誰も死んでないし最高じゃん。

これ、ただの家飲みだな。

度を越えた正直さ

小田急に乗ってたら世田谷代田で母と子が乗ってきた。

二人ならんだ席は空いてなかったので、母は子に「そこに座りなさい」と言い、自分はちょっと離れたところに座ろうとした。すると子がきっぱりと

「離れているのは、嫌」

そう言った。

甘えたことなんだけど、その力強さにすこし感心した。彼の学校の標語は「ちゃんと自分の意見を言える子」かもしれない。

たまにニュースでも「欲望に負けてしまった」「海外旅行に行きたかった」などと動機を潔く話す人を見る。

「堂々としているな」と思う。

むかし、取引先を紹介してくれた人に「あの場でうちの手数料いらないっていったのは客の手前、いい顔をしたかったからだ!」と言われたことがある。「だから手数料を裏でよこせ!」とも(怖ええー)

度を越えた正直さはギャグなんじゃないだろうか。

人間の凶器

高校の体育で柔道があった。柔道の最初の授業で体育教師が「人間には凶器があるのを知っているか?」と問いかけてきた。

人間の凶器?

ははーん。狂気だ、と思った。柔道に夢中になるあまり、我を忘れてしまうこと。凶器と狂気をかけてるのだろう。

指されたらそう答えよう。だが教師は別の生徒を指した。

生徒:「爪です」
体育教師:「正解」

具体的で単純な話だった。指されなくてよかった~。ドヤ顔で「狂気、狂うに気持ちって書く狂気です」と言ってしまうところだった。言ってたらすげえ恥ずかしかっただろう。よかった~。高校3年間のニックネームが「狂気」になるところだった。

もう30年も前の話だが、その安堵だけずっと覚えている。

どんとこい

このまえとある小売店で、社内用のパソコンがカウンターの上に置きっぱなしになっていた。

社内システムらしき画面が出ていたが、そのタイトルは「どんとこい」だった。

気になって調べたら、アパレル店舗用の販売管理システムの名前だそうだ。

たいていの会社は勤怠管理、経費計算のサービスを導入してて、それがわりと「らくらく」とか「サクサク」などくだけた名前である。

なのに社内では一般的になっていて「らくらく入れておけって言ったろ」「サクサクをやってない人、人事からアラート出てます」などと当たり前のように言うのが面白い。わかるけど、なにを言ってるのだ。
先の小売店も「どんとこいの数字見てください」などと言っているだろう。

むかしのサラリーマンがコピーのことをゼロックスと呼ぶのって、そういう会社ことばが一般化したってことなんだろうか。

UFOキャッチャー

クレーンゲームをUFOキャッチャーと呼ぶ。セガの登録商標だと思うが、改めて見てみると実物はかなりUFOに関係ない。

だってUFOの部分がこれしかないのだ。

考えてみたら、このゲームはキャトルミューティレーションをする宇宙人の立場に立つゲームである。もしくはエイリアン・アブダクション(宇宙人による誘拐)。

宇宙人による仕業は実はあんなに難しかったのだ。クレーンは頼りないし、なぜか右と前にしか進むボタンしかない。

UFO内部では「ちょっと横から見てて」「あー行き過ぎ~」「両替してくる」なんて会話がされていると思う。

現場の宇宙人からもクレームがきているだろう。戻るボタンを付けて欲しい、と。

よくあるSFのように、実はUFOキャッチャーは宇宙人によるキャトルミューティレーション要員を選抜するためのもので、あれで好成績を残すとUFOで本採用される、なんてこともない話ではないかもしれない。頑張りしだいでUFOの正社員に。

車や家をUFOキャッチャーの景品のぬいぐるみでいっぱいにしているとUFOに連れて行かれる。

UFOキャッチャーはゲームをしてないとき、物悲しい音楽が流れているがあれはソニック・ザ・ヘッジホッグの曲である。そしてその曲を作曲したのはドリカムのベースの人だ。

これを聞くと1990年代のすすけたゲームコーナー(ゲームセンターではない)にいる気持ちになる。

いつか歌詞をつけてドリカムの歌にして欲しい。