全員笑っている

なんどかラジオに出させてもらったことがある。

毎回楽しいのだ。

なんでこんなに気分がいいんだろう。このまえ気づいたが、ラジオはスタッフ全員笑っているのだ。

スタッフの人数が少ないというのもあるが、卓に座っている技術スタッフも放送作家もMCの冗談で笑っている。テレビやイベントなど関係者が多い現場だと、ひとりぐらい辛そうな若者がいる。

ラジオの出演が終わってビル出口まで案内されているとき、作家が「遊びみたいな感じなんですよね」と言っていた。

プロ意識とは無関係の、この遊びみたいな雰囲気だからできるものもあるよなと思った。

デイリーのことなんだけど。

ちっちゃいスピーカー

 

タクシーの中で流れているCMのことばかり考えている。

借りた車に荷物を積んでいると元のオーナーがやってきて「ちっちゃいスピーカー持っていく?」と言う。

言われた若者はまさかという表情で

「ちっちゃいスピーカー持っていっていいんですか?」

と聞き返し、もうひとりは画面横から入り込んで

「ちっちゃいスピーカー持っていっていいんですか?」

と同じセリフを言う。

え?この「ちっちゃいスピーカー」ってそんなにありがたいの?それとも何かの隠語?

これだけフィーチャされるのだから伏線であるのは間違いない。

だが、ちっちゃいスピーカーの中に違法薬物が詰まってて無実の罪で拘束されるとかそういう展開はなく、キャンプファイヤを囲んで終わるのだ。

回収されない伏線。しかもちっちゃいスピーカーのCMではない。

伏線なんて世の中にない。例えば「あれ、この駅、前に来たことがあるような」と言ってる人がいても、それはただの勘違いでタイムリープではない。

回収されない伏線だけのドラマを作りたいと思ったらまさにこのCMがそれだ。

こんなにもかき乱されるなんて。いい。

YouTubeで何度も見たし、ちっちゃいスピーカーがなにかも特定した。

https://www.yodobashi.com/product/100000001003453082/

これだ。

もしかして若者の間でちっちゃいスピーカーが外遊びには必須で、この商品がデフォルトなのだろうか。

20代の若者に聞いてみたらそんなことはないとのこと。

CMタイトルに「カーシェアだけじゃない」とあるので、車の貸し借りだけじゃなくてコミュニティであることをアピールしたいのかもしれない。Airbnbのような。

そうするとオーナーがなにかタダで貸してくれるという展開は納得だ。では、何を貸したらいいだろう。

ビール → 車のサービスでアルコールはだめだ
食材 → 知らない人から食べ物もらうのは恐い
ギター → 弾けない人もいるし
キャンプ用品 → たぶん持ってるだろうし…

そう思うとちっちゃいスピーカーは最善の解だ。ちっちゃいスピーカーだ。

オーナーが「これ便利よ~」も言うのも、若者たちが「ちっちゃいスピーカー持っていっていいんですか?!」と喜ぶ気持ちも分かる。

しかしちっちゃいスピーカーが欲しい。

経堂の沼

経堂にどんないい店も続かない場所があって、そこにできたそば屋が半年たたずに休業になった。

それまでそこにあったのは、晩杯屋の新業態の低価格ステーキ店(ベコ太郎)、東京初出店の博多のとんこつラーメン(博多一幸舎)、アメリカ人シェフのラーメン店(アイバンラーメン)というそうそうたる店。

そんな店でも持たなかった場所にできたのはふつうのそば屋。いちど食べたけど、ふつうだった。そばの香りがするとかではないそば。

この装備で数々の猛者を飲み込んできたワニの沼に挑むのか…。と思ったら半年たたずに休業の貼り紙。

「そ、そこは恐ろしいワニがいるんだぞ!」という声を無視して入っていってぷか~と靴だけが浮かんで来る。映画のタイトル前のエピソードのようだ。

地元ブログも「あの場所」って紹介するぐらいのバミューダトライアングル。

そば屋の向かいのカレー屋は南インド料理ですごくうまいので続いて欲しい。

三角コーンを傍らに

大腸検査では直腸に「ちょっとしたおできみたいなもの」があったので組織をとって検査にまわすことになった。

僕は不動産屋のカウンターで店員が電話で物件の空き状況を確認しているとき、
「これ必死で探してるアピールかな」
「ついさっき決まっちゃいましたって言ってるけど相手もグルかな」
「そもそも受話器持ち上げてるけど電話かけてなかったりして」
「この人は本当に不動産屋だろうか」
「ここ、不動産屋かな」
と考えるぐらい人を信じないので、「ちょっとしたおでき」も重大な病気と脳内で変換された。

2週間後、検査結果を聞く予約は9時だった。午後からデイリーの撮影がある。三角コーンが必要な撮影だったのだが、そうすると診察室に三角コーンを持って入ることになる。三角コーン傍らに深刻な結果を聞くのはどうなんだ。

そんな組み合わせ、とっちらかりすぎて説明がつかない。でも現実はたまにそういうことがある。

でもそんなショックを乗り越えておちゃらけたデイリーの撮影をするおれもかっこいいなとも思った。

結果は異常なし、おできもなんともなかった。おできの写真を見せてくれたが、蚊に刺された跡より小さかった。

こんな大きさなら「ちょっとしたおでき」って言ってくれよ。

おできのほか、医師は腸の写真を見せてくれた。写真は腸の奥から肛門に向かって進み、最後に肛門のところで痔がありますねと言った。痔を腸の側から見たのは新鮮だった。

いくつかの塊があっちこっち向いていて、ラシュモア山の大統領像に少し似てた。

わ、起きてた

眠りが浅い。

いびきをかいている人は少しつっつくと静かになるものだが、僕は少しつっつかれると起きてしまうのだ。

僕のいびきを止めようと突っついた妻は「わ、起きた」と思うらしい。

前回に続いて大腸検査の話だ。

腸のなかを機器が移動するので麻酔を入れる。「ねむくなる薬いれますね」と言われたのだが、まったくねむくならなかった。そういうものなのかなと思ってじっとしていた。

検査している人たちが子供の自由研究をやったかどうかという話をしているのが聞こえた。「僕、自由研究みたいな仕事しているんですけど、読書感想文を作る企画は人気ですよ」と会話に入ってみた(腸にカメラ入ったまま)。

しかし検査師の答えは

「わ、起きてた」

だった。家でよく聞くセリフだ。死体がしゃべった、みたいなリアクションが愉快だった。

しかし後から考えたのだが、「自由研究みたいな仕事」や「読書感想文を作る企画」って麻酔で朦朧としている人の発言と思われたかもしれない。でもデイリーポータルZのことである。

僕の仕事はうわ言みたいなんだなと検査後のベッドで思った(そこでも全く眠くならなかった)。

うんこにだめ出し

大腸カメラ検査を受けた。

検査のまえに腸をカラにする必要がある。そのために2時間かけて2リットルの下剤を飲み、10回以上トイレに行くように言われた。便が黄色で透明になったら検査を始めるとのこと。
そのヘビーな説明を聞いてトライアスロンのようだと思ったがぜんぜん違う。

案内された部屋には同じ検査を受ける人が5名ほど。ひとりにひとつ小さい机が用意されていて、そこに下剤が置いてある。トイレに行くことが義務付けられた小部屋である。

ほぼ同時刻に入った男性が隣りに座る。あまりトイレに行けてないようだ。でも手元のメモをちらっと見たらトイレの回数が僕より1回多かった(回数をメモすることになっている)。悔しい!
かたや「飲んでるんですけどまだ1回しかトイレに行けないんです…」と看護師に言う人もいる。その人の横を通ってトイレに行くときは腰をかがめて音を立てないようにした。僕だけすいませんという気持ちだ。

悔しさと遠慮、うんこだけど感情はいつもどおりである。

そして便がクリアに仕上がったら、看護師に見せるのだ(なんと!)。

僕は前日に消化のいい専用食(テンション上がって1日でいいのを2日食べ続けていた)を食べていたせいですぐに仕上がった。看護師を呼んでドヤ顔で見せると

「状態はいいけど回数が少ない」

とのことだった。うんこにだめ出しされた。

「回数、大事ですか?!」

うんこなのに食い下がるおれ。

むかし村上ファンドが「金儲け、悪いことですか?」と言ってたが、あの言い方に似てた。

そしてまた小部屋に戻って下剤&うんこを繰り返す。小さい机が並んでいる部屋はちょっと教室のようでもある。

授業中にあんなにトイレを我慢していたのに、トイレに行くとほめられる教室にいる日が来るとは思わなかった。うんこを我慢して青くなってたいた中学生の自分に教えてあげたい。

君が夢見た世界は30年後にやってくるぞ、と。

エアカーはチューブの中を走ってないけど、うんこ自由の未来は来る。

そしてうんこOKになって検査を受けて異常なしだった。

(検査中や検査結果を聞いたときも面白かったのでまた書く)

考えさせられるテレビ

王様のブランチを見ているといろんなことを考える。

話題のデザートにのってる小豆がコガネムシだったらどうだろうとか、物件紹介のコーナーで全員のつなぎの色が同じだったらどんな絵になるだろうかとか。

気がつくと、もっと変にする方法をずっと考えている。

そこから転じてデイリーの企画のアイデアになったりしている。
虫っぽいデザートを探すとか(例えばだけど)。

ほかの番組ではこんなひとりブレストにはならないのだけど、王様のブランチだけは、なる。

あの凡庸さやテンポがちょうどいいのだろうか。いや、平日のワイドショーだと悪いニュースを伝えるのでそっちに反応してしまうのだが、それがないぶん自由に想像できるのかもしれない。

考えさせられる、とは社会問題によくつく形容詞だが、王様のブランチもなかなか”考えさせられる”だと思う。

南極探検

仕事ができる人に会うと「この人は南極探検に行っても生きて帰ってこれそうだな」と考える癖がある。

吹雪にあっても的確な判断でチームを危険な目に遭わせることがないだろう(むかし伝記で読んだスコットとアムンゼンのイメージである)。

逆の場合、「この人、全滅させるな」とか「この人はチームに入れないでおこう…」とこっそり思っている。

つまり、僕は会社員を始めてからずっと南極に行くメンバーを探しているのだ。

60ぐらいで南極に行くのかもしれない。

高菜

世間的にはすごく普通のことなんだけど、なぜか自分の人生ではしてこなかった、ということがある。別に避けてきたわけではないんだけど、たまたま現れなかったこと。

たとえば僕にとっては「日焼け止めを塗る」と「高菜を食べる」。

育った環境、そしておとなになってからもその習慣が身近になかった。

でも僕が普通にしていることでも、きっとやったことがない人もいるだろう。「甘栗を買う」とか。

高菜をよく食べて、日焼け止めを塗って、近所のコンビニがデイリーヤマザキ。そんなねじれの関係みたいな人生をたまに想像してうっとりする。

伏線

歯医者で歯の磨き方を教えてもらった。

デンタルフロスを使った方が良いとのこと。ただ一ヶ所、歯の隙間が狭いところがある。そこは糸を横から抜いてください、と鏡でその歯を見せられて言われた。

じゃあプラスチックの器具に糸が張ってあるタイプより糸のままのタイプがいいですね、はい、そうですね、などと会話していたが、鏡にはしっかり長い鼻毛が見えていた。

これが脱出ゲームなら「わかったぞ!鼻毛を使うんだ!」となるところだが、現実にはそんな辻褄があうことはない。

鼻毛はなんの伏線でもなく、ただの鼻毛である。