「ついで」

9年前、痔ろうになって手術をした。

検査が痛かったり、術後の症状に一喜一憂したり、自分にとっては一大事だけど世間的にはよくある体験をした。

でも、ひとつだけ覚えてることがある。

痔ろうになる前にいぼ痔があったのだが、それを医者が「ついでに取っておいたよ」と軽く言ったのだ。

その痔もまあまあ悩みのタネで、座り仕事が多くなると悪化して(だから単行本を出すたびに悪化していた)なんどか病院に行った。

そんな長年の悩みが「ついで」で治ってしまったのだ。

拍子抜けするような幸運だ。

ああいうラッキーな「ついで」、またないかなと思っているがなかなかない。

「なにもしない」ができない

いま(2020年3月5日)、みんな焦ってる。

新型コロナウイルスが流行らないように学校が休みになり、在宅勤務が推奨されて会社に行かないことが良しとされている。遊園地やイベントなどは中止されて、行くところはないが時間はある。

このたくさんある時間、どこに行っても人がいないこの時期に何かできるんじゃないか。なにかやっておくべきなんじゃないのか。そう考えている人が多い。

オンライン学習サービスが無料になったりしているけど、クリスマスプレゼントに偉人伝を買い与えるような感じはある。

僕はもともと会社であまり仕事をしないし、学校も関係がない。それでも「やらなければ!なにかを」みたいな気持ちに襲われる。

「毎日バッティングセンターに行って、バッティングをうまくなるのはどうだろう?」

ついにそんなことまで言ってしまったりしている。なんでそんなことするのだ。

「なにもしない」ができない。来年のドラフト会議でも目指すか。

会社に秘密にしたいこと

いつも頼んでる運送屋さんに撮影の小道具を運んでもらった。

運送屋さんは断片的に僕の仕事を知っている。そしてちょっと違ってるところもある。

・なにかを作って撮影する仕事である(◯)
・映像の仕事だと思っている(✕)
・林はそのチームの長である(◯)
・別の仕事の人にあのチームは業界で有名だと聞かされた(△)
・イッツコムという会社は知らない

その結果、イッツコムは僕がメディアを運営するために作った会社だと思っているようだ(会社と東急グループの人には聞かせられない勘違いである)。

お金関係も見てるのか聞かれたので、それは別の人間にお願いしていると答えたら

「そうか、経営は別の人に任せているんですね」

と言っていた。ルノアールの立替を人にお願いしているということを言ったつもりだったのだが。

そしてビルを見て驚いてた。

きっとこれ全部がデイリーポータルZだと思っている。
(実際は決まった席もなく、会議卓みたいなところに身を寄せ合っている)

でも訂正も面倒だし(ちょっといい気分だったので)そのままにしておいた。

自分は会社の社長だと子どもに嘘をついてしまったお父さんがつじつま合わせするコントのようなことがいつかあるだろう。

肩からジャケットをかける

都営新宿線 新宿駅に向かうエスカレーター脇にこの看板が出てる。

駅ビルのレストラン街の広告だ。

女性が肩にジャケットをかけているが、右でごはんを前にしたときには袖にジャケットが見える。

食べるときはジャケットを着ているのだ。

つまり、
1.憂いを帯びた表情(お腹が空いている?)でごはんを待ち
2.ごはんが来て食べようとしたがジャケットが滑り落ちそうになる
3.どこかにジャケットかけるところないか探したがちょうどいいところがないので、着ちゃうか
4.いただきます
ということだろう。ひとりで食べるには多すぎるから張り切るのもわかる。

いつもエスカレーターに乗りながら2~3のシーンを想像している。

しかしだ。肩にジャケットをかけた女性が僕の人生に登場したことがない。たまに見かけるの実在するのだろう。神戸で見た。

でも交友関係でも仕事関係でもそんな人は登場しなかった(金髪に染めている人はやたらと登場する)。同じように見えて世界は別れている。

想像だけど、肩にジャケットをかける女性の世界では、男性はみな肘当てがついたツイードのジャケットを着ていると思う。