サイコロステーキ

新型コロナが流行って飲み会をしなくなって9ヶ月。ときどき「ああ、天狗とか行きてえな」と思う。

居酒屋の天狗だ。

チェーンの普通の居酒屋。若者向けの激安居酒屋でもないし、もちろん名門居酒屋でもない。わざわざ行くほどではないけど帰りに寄るにはちょうどいい店。

つまみも何がうまいというわけではないけど、どれもちょうどいい。あ、でもサバの一夜干しはうまい。あと肉豆腐。

その天狗がネット通販をはじめていた。サバが食べたかったのだが、天狗の一押しはサイコロステーキだった。

確かにサイコロステーキあるな…。ぐらいだったのだが、どうもようすがおかしい。天狗自身の思いが強いのだ。

………いや、そんな超人気メニューとは思わずになんとなく食べていたのだが、その程度の意識だったことを恥じるほどの熱の入れようだ。

なにしろ鉄板付きである。

天狗で550円のサイコロステーキを焼くための鉄板がついている。サイコロステーキ3つに鉄板ついて4000円だ。

> 何度も何度も試作を繰り返した天狗のみが知っている秘密を教えます。
> サイコロステーキの美味しさの秘訣は、この鉄板が大きなカギだったのです!

だったのです!の圧にひるんでしまう。営業企画部長談! どーん!

目の前でこのテンションで説明されたら絶対に買ってるだろう。

目の前でなくても買ってしまったのだが。

肉と一緒にクール宅急便でキンキンに冷えた鉄板が届いた。

焼き方のガイド付きである。自信がないので妻に焼いてもらった。

見た目も天狗だし、味も天狗で食べた味のまんまで笑った。

忘れてたけど、これだ。肉のカリカリ具合もちょっと筋っぽい感じも、靖国通り沿いの店やヒカリエ横の店で半分無意識に食べてた味だ。

わざわざ思い出す味じゃなくて、そういえばそうだったという味。

たまに地元に帰ると空き家の軒先に半分草に埋もれてるバイクがあったりして、そういえばこんな街だったなと思いだすような。

一緒に買ったサバの一夜干しもいつもの天狗味だった(サバはたまに思い出していた)。

肉豆腐は通販になかったので自分で作った。