南極探検

仕事ができる人に会うと「この人は南極探検に行っても生きて帰ってこれそうだな」と考える癖がある。

吹雪にあっても的確な判断でチームを危険な目に遭わせることがないだろう(むかし伝記で読んだスコットとアムンゼンのイメージである)。

逆の場合、「この人、全滅させるな」とか「この人はチームに入れないでおこう…」とこっそり思っている。

つまり、僕は会社員を始めてからずっと南極に行くメンバーを探しているのだ。

60ぐらいで南極に行くのかもしれない。

高菜

世間的にはすごく普通のことなんだけど、なぜか自分の人生ではしてこなかった、ということがある。別に避けてきたわけではないんだけど、たまたま現れなかったこと。

たとえば僕にとっては「日焼け止めを塗る」と「高菜を食べる」。

育った環境、そしておとなになってからもその習慣が身近になかった。

でも僕が普通にしていることでも、きっとやったことがない人もいるだろう。「甘栗を買う」とか。

高菜をよく食べて、日焼け止めを塗って、近所のコンビニがデイリーヤマザキ。そんなねじれの関係みたいな人生をたまに想像してうっとりする。

伏線

歯医者で歯の磨き方を教えてもらった。

デンタルフロスを使った方が良いとのこと。ただ一ヶ所、歯の隙間が狭いところがある。そこは糸を横から抜いてください、と鏡でその歯を見せられて言われた。

じゃあプラスチックの器具に糸が張ってあるタイプより糸のままのタイプがいいですね、はい、そうですね、などと会話していたが、鏡にはしっかり長い鼻毛が見えていた。

これが脱出ゲームなら「わかったぞ!鼻毛を使うんだ!」となるところだが、現実にはそんな辻褄があうことはない。

鼻毛はなんの伏線でもなく、ただの鼻毛である。

ボーナスチャンス

新宿は、徳川家康が家臣に「馬で一周りしたぶんのエリアを与える」と言ってできた土地だそうだ。家臣が内藤さんだったから内藤新宿。

昨日知った。

しかしボーナスチャンスみたいな土地の与え方である。

家康は「ボーナスチャンス!」と叫んだかは定かではない。

出世の階段(新橋の愛宕山・殿様が階段の上の梅の木をとってこいと命じて、できた人が出世した)もボーナスチャンスである。封建時代は王様のブランチの買い物コーナーみたいな話が多い。

しかしどちらも今ならパワハラである。王様のブランチはパワハラでないので現代的だ。

ファミレスにいたら隣の親子連れが店員を呼んだ。

「この肉、味がついてないみたいなんですが…」

店員は確かめたあと、平謝りして新しいのを持ってきた。するとこんどは中学生ぐらいの子どもが

「エビのジェノベーゼだけどエビのってない~」

と言って笑った。親は店員に「もうほとんど食べちゃったからいいんですけど、エビなかったみたいで~」とやんわり伝えていた。店員はまた謝っていた。

アンラッキーな親子だなと思ったのだが、気になったのは子どもがずっと「うける~」と笑っていたことだった。

不運が訪れても笑っていられるその姿勢で彼は一生楽しく過ごせるだろう。

そしてあのファミレスは厨房にとんだ地雷みたいな店員がいる。おれのは味がついててよかった。

タマちゃん

デイリーポータルZでゴールデンウイークに「あぶなく忘れるところだった平成」というテーマで記事を集めた。

ただ、同じ年でも年齢によって流行ったものが違うので、それがひと目で分かる表を作ることにした。

結果、こういう図になったのだが(リンク)企画段階で手描きのラフを編集部のslackに送った。

平成の中心に全世代にわかる存在としてタマちゃんがいる。BCとADの境界のようだ。

僕はタマちゃんを大事なものと思っている。恥ずかしい。

ああいう身近なちょっと変わったことを書きたいと思ってデイリーポータルZを始めたわけだし、タマちゃんきっかけで人生が変わったひとりなのかもしれない。タマちゃんとその前年にあったボラの大量発生。

いまでもGoogleのニュースのアラートで「大量発生」をキーワード登録して大量発生の情報は逃さないようにしている。

アート

デイリーの記事でパイプいすにタイヤを付けたものを作った。

ずっとバルコニーに置いてあって邪魔だったので粗大ごみで捨てることにした。回収シールに名前を書いてマンションのゴミ捨て場に置いた。

だが、粗大ごみ回収の人が見つけやすいよう、管理人がいすをゴミ捨て場から表の道路に移動してくれたのだ。

その結果、「林雄司」と書かれたおかしな工作が多くの人の目に触れることになった。恥ずかしい。

そしてそういうときに限ってゴミ回収が遅く、昼過ぎまで僕の作品は道路に置かれ、期せずしてアートになった。

プロセス

ニコ生の文化に詳しい人に話を聞いたことがある。

人気の生主は顔を出しているけど、それとは別に自分の似顔絵のキャラクターがあるという。たしかにみんなサイトにイラストが載っている。

「そのほうがグッズ展開とかしやすいんですよ」

とのことだった。なるほど。僕はそのキャラクター化というプロセスを抜いてしまったのでこんなグッズができることになる。

昨日、廊下に置きっぱなしだったダンボールの中から見つけた。

何かのイベントで売って盛大に売れ残ったTシャツである。

バックプリントは後頭部である。凝るところはそこじゃなかった。

カンザスシティ

カンザスシティに行った。この記事のためである。

なんの縁もないところに行くのは嬉しい。用事のないところに行く理由を作るためにネタを探しているのかもしれない。

高速道路の両脇には広い景色が広がっていた。アメリカ西海岸とも違う。なのに家は平屋ではなく2階建ての家が多かった。


飛行機から見た景色・玄関から道路までが長い

街は思ったよりも都会でビルがたくさん立っていた。通信会社のスプリント本社があって、スプリントショップがあちこちにある。


カンザスシティの金融街

3日いてわかったが、ビルが建っているのは5キロぐらいの範囲でその周辺は住宅街、さらにその外側は草原だった。街の規模としては新宿から渋谷ぐらいの範囲だろうか。

Lyftのドライバーいわく、このあたりは石がとれるのでその石を使って家を建てたのだという。たしかに道路際に石のかたまりが露出しているのが見えた。

ミズーリ州で石が採れるのか調べたけどよくわからなかった。こうやって旅行に行くたびに各地の歴史を調べるが、世界じゅうの土地に歴史があるわけで、縦横に広がるエピソードの前に無力感を感じる。諦めよう。

そのドライバーにカンザスシティにはじめて来たことを言うと、アプリ上で僕が降りたことにして、グーグルマップでナビゲーションし始めた。

そして中心地にある塔は中に入れることや黒人野球リーグの名選手がいたことを説明していた(半分ぐらいしか英語わからず)。ぼったくられるのかと思ったら逆だった。

さっさと降りたことにして3ドルぐらいに安くしてくれたのだった。

アメリカってたまにこういう度を超した親切な人に会う。

サンマテオのホームデポで店員のおっちゃんに定規売り場を聞いたら、自分の巻き尺をくれた。え?なんで?と戸惑ってると、これ、ベルトに付けられて便利だぞと巻き尺の話をしていた。

なのでうちにはアメリカのおっちゃんが使い古したインチ表記の巻き尺がある。

お面を注文したからお面が届いた

家に帰ったら心当たりのない会社から封筒が届いていた。開けるとお面が入っている。

……なんだ。どういうことだ。

5秒ほどひるんだが思い出した。おれが注文したんだ。

夜中にAmazonで見つけて気になったので注文したのだった。

お面を注文したからお面が届いただけである。Amazonはふざけて注文してもしっかり届くからすごい。

だが、思った以上に面白い。

裏を見るとCelebrity Cutoutsと書いてある。ホログラムも貼ってある。モデルの許可をとっているということだろうか(とってなかったらそれはそれでおもしろいけど)

Celebrity Cutoutsで検索すると公式サイトらしきものが出てきた。

お面のほかに等身大パネルや巨大なお面もある。イギリスの会社らしい。

それだけの会社か…すごいし憧れるし心配でもある。でもサイトに書いてあるポリシーが立派だった。

We are the UK’s biggest and, we are certain, the best supplier of Celebrity Cardboard Cutouts. But we don’t simply make cutouts of the rich and famous! For us everyone is a star.
(確かに、私達はイギリスで一番のお面のサプライヤです。でも私達はただ有名人のお面を作っているのではありません。皆さん全員がスターです)

これを立派なイギリス英語で喋っているのだと思うととても惹かれる。一昨年ロンドンに行ったときに行けばよかった。

インスタグラムに「おしゃれさんとつながりたい」というハッシュタグがあるが、僕は世界のどうかしている人とつながりたい。